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熱中症による労働災害の発生状況

 警備業における熱中症の発生状況は、2018年に業種別の死亡者数でワースト4、死傷者数でワースト5となる深刻な状況です。熱中症対策用品の導入。派遣される警備先での職場環境を考慮した対策。契約側と熱中症対策のための休憩や水分補給に関する理解。巡察等における水分補給等の交代要員を手配するなどの対策実施が求められます。

<熱中症発生に関する取り巻く環境の変化>
 熱中症に対する取り巻く環境は、発生件数の増加。発生時の深刻な症状等により急速に認知が広がりました。また、労働災害として発生した際、十分な対策を講じずに発生した場合には行政による指導・監督が厳しい傾向にあります。
 また、2016年(平成28年)に厚生労働省は、前年の熱中症による死亡災害の発生状況を踏まえ、建設業と屋外で作業する警備業を熱中症予防対策の重点業種として取組が行われました。
 熱中症予防対策を講じずに労働災害として発生した場合、事業者は安全配慮義務違反に問われる場合もり、労働者保護の観点だけでなく企業防衛の観点からも対策実施が重要となっています。

<警備業における熱中症の状況>
 厚生労働省「職場における熱中症による死傷災害の発生状況」において、2018年の熱中症発生人数は110人。産業別発生件数で建設業、製造業、運送業、商業に次いでワースト5位。熱中症により3名が死亡しました。
 また、発生件数でみると前年(37人)から約3倍へと大幅に増加しました。
 熱中症の個別の発生状況では、交通誘導警備及び施設警備の内駐車場での誘導業務や線路上での列車見張り業務など、屋外での警備業にて発生しています。

 熱中症に繋がる背景としては、多くの警備業において警備員は警備先へと派遣される業務体系であるため、就業環境の状態管理については現場警備員への依存が大きくなります。このため、現場警備員の就業環境が悪化していても、依頼者側へ申し入れ。交代要員の要請など行い難く就業環境にあると言えます。
 これを改善するためには、警備業者側が積極的に就業環境の把握や状態管理に努めなければ、適切な対策等を行うことは困難です。
 夫々の警備員が派遣される警備先(業務場所)が異なる状況において、それら全ての就業環境の把握と適時休憩等のため交代要員を手配することは、警備業者側にとって多量の労力とコスト必要となるため、未だ多くの警備業者で対策が後手に回っていると思われます。

 しかし、2013年(平成25年)6月に兵庫県尼崎市額田町において警備員が熱中症にて死亡した労災事故では、男性警備員3人をガス工事現場で高温多湿な状況での業務に対し、熱中症対策として塩分や飲料水などをとらせる対策を怠たり、男性警備員1人が同日熱中症により死亡させたとして、尼崎労働基準監督署は、熱中症対策を怠ったとして労働安全衛生法違反の疑いで警備会社と同社会長を書類送検するに至りました。

 このように熱中症対策は企業(使用者)の安全衛生に関する重要な責務であると捉えられているということを警備業界全体が共通の認識を持ち、各警備業者が対策を実行することが急務となっています。


<熱中症による死傷者数の業種別状況>
 年 建設 製造 運送 警備 清掃
と畜
その
2018
死傷者数
239 221 168 110 118 81 32 5 204 1,178
 内、死亡者数 10 5 4 3 2 0 1 0 3 28
2017
死傷者数
141 114 85 37 41 32 19 7 68 544
 内、死亡者数 8 0 0 2 0 1 2 0 1 14
2016
死傷者数
113 97 67 29 39 37 11 13 56 462
 内、死亡者数 7 0 0 0 1 1 1 1 1 12
2015
死傷者数
113 85 62 40 50 23 13 8 70 464
 内、死亡者数 11 4 1 7 0 2 1 0 3 29
2014
死傷者数
144 84 56 20 28 16 13 7 55 423
 内、死亡者数 6 1 2 0 0 0 1 0 2 12
2013 151 96 68 53 31 28 8 8 87 530
 内、死亡者数 9 7 1 2 3 2 1 1 4 30
2012 143 87 43 27 35 28 7 6 64 440
 内、死亡者数 11 4 0 2 0 1 0 2 1 21
2011 139 70 56 17 25 27 10 6 72 422
 内、死亡者数 7 0 0 3 2 1 2 2 1 18
2010 183 164 85 44 32 44 17 4 83 656
  内、死亡者数 17   2 47 
参考資料:厚生労働省、各年の公表資料「職場における熱中症による死傷災害の発生状況」

警備業における熱中症災害事案の詳細
参考資料:
厚生労働省、各年の公表資料「職場における熱中症による死傷災害の発生状況」より抜粋
2018年7月
 午前9時より鉄道の線路上における電気設備工事の現場で列車見張り警備の業務に従事していた。昼の休憩中、作業員集合場所の道路上で寝ている被災者を不審に思った同僚が声をかけたところ、体調不良を訴えた。応急手当を行ったが回復せず、救急搬送されたが、その後死亡した。
・環境省熱中症予防情報サイトによるWBGT値は 32.7℃(注)。

2018年7月
 試験会場周辺の道路において、違法駐車防止及び道案内のため警備業務に従事していたが、倒れているところを通行人に発見された。病院へ搬送されたが、午後4時頃に死亡と診断された。
・環境省熱中症予防情報サイトによるWBGT値は 29.9℃(注)。

2018年7月
 橋梁建設工事において警備業務に従事していたが、作業現場内で倒れているところを発見された。救急搬送されたが、4日後に死亡した。
・環境省熱中症予防情報サイトによるWBGT値は 29.6℃(注)。

2017年7月
 被災者は災害発生当日、個人住宅の上水道引き込み工事現場で、道路誘導員として現場に入場していた。午前 10 時頃から体調が悪化し、呼びかけにも答えられないような状況となった。その後救急搬送されたが、4日後に死亡が確認された。
・環境省熱中症予防情報サイトによるWBGT値は 30.5℃。

2017年7月
 被災者は、災害発生当日の午前9時から宅地造成工事現場の警備 業務に従事していた。午後3時頃現場作業が終了し、工事関係者が 現場の片付けを行っていたとき、被災者が体調不良となったため、 救急車で病院へ搬送した。しかし、翌日搬送先の病院で、熱中症による多臓器不全により死亡した。
・環境省熱中症予防情報サイトによるWBGT値は 27.3℃。


2015年7月
 被災者は 9 時から住宅の新築工事現場で交通整理を行っていた。現場付近には日差しを遮る場所はなく、休憩時、被災者は縁石に座っていた。昼休憩中 の 12 時頃、被災者の体調が悪そうであったため、午後の作業はしばらく休む よう伝えた。16 時 30 分頃、被災者の様子を確認に行ったところ、倒れてい る被災者を発見したため、119 番通報し、被災者は病院に搬送されたが、21 日後に死亡した。
・環境省熱中症予防情報サイトによるWBGT値は 31.5℃
・現場付近には、休憩時に日差しを遮ることができる場所はなかった。
・水分や塩分の摂取は労働者任せであった。
・被災者に対して熱への順化期間は設けられていなかった。
・被災者は熱中症発症に影響を与えるおそれのある疾患を有していた。
・被災者に対して健康診断結果に基づく対応が不十分であった。

2015年7月
 被災者はガス管入れ替え工事現場で、9 時から 17 時まで交通整理の業務を行い、同僚と車で会社に戻った後、17 時 20 分頃、自転車で帰宅した。18 時 30 分頃、居住アパートの敷地内で被災者が倒れているところを通行人に発見され、病院に搬送されたが、死亡した。
・環境省熱中症予防情報サイトによるWBGT値は 31℃
・水分や塩分の摂取は労働者任せであった。
・被災者は当日の業務の前に、前日の夜が寝苦しかったことを同僚に伝えて いた。

2015年7月
 被災者は 8 時から街路樹伐採現場で交通整理を行っていた。15 時 30 分頃、被災者がふらふらしながら同僚に「もう無理です」と申し出たため、同僚は 一旦被災者を座らせ、現場責任者に連絡した。既に自力で動くことができなかったため、病院に搬送したが、翌日に死亡した。
・環境省熱中症予防情報サイトによるWBGT値は 31.6℃
・被災者に対して健康診断は行われていなかった。

2015年8月
 被災者は 8 時頃から道路で除草作業現場の交通誘導作業を行っていた。17 時 に作業を終え、現場の作業員が運転する車で自身のバイクが駐輪されている 場所まで送迎される途上、被災者が運転手にもたれ掛かるように倒れ、意識が朦朧とした様子であった。同僚が 119 番通報し、病院に搬送されたが、死亡した。
・環境省熱中症予防情報サイトによるWBGT値は 29.8℃
・被災者に対して健康診断は行われていなかった。

2015年8月
 被災者は 8 時 30 分から工場屋根改修現場で車両の誘導を行っていた。業務終 了後の 16 時 50 分に、被災者は「明日、明後日休みたい」と言い、車で帰宅したが、17 時 15 分頃、近くの路上で倒れているところを通行人が発見し、119 番通報により病院に搬送されたが、死亡した。
・環境省熱中症予防情報サイトによるWBGT値は 31.6℃
・水分や塩分の摂取は労働者任せになっていた。
・現場に元請事業者が設置した、冷房、製氷機、塩飴等が備えられた休憩場所を、被災者は遠慮して休憩時に利用していなかった。
・被災者は熱中症発症に影響を与えるおそれのある疾患を有していた。
・被災者に対して健康診断は行なわれていなかった。
・被災者に対して熱中症に関する教育は行われていなかった。

2015年8月
 被災者は除草作業現場で、側道での交通整理を行っていた。10 時 45 分頃、同僚が被災者の異変に気づき、休憩をとるよう声をかけた。被災者が移動し ようとしたがその場で倒れ、病院に搬送されたが、翌日死亡した。
・現場における災害発生時のWBGT値(実測値)は 31℃であった。

2015年8月
 被災者は道路災害復旧の工事現場で、交通整理を行っていた。13 時 40 分頃、他の作業員が放心状態になっている被災者に気づき、休憩させた。約 10 分後、その作業員が被災者の様子を見に行ったところ、被災者が倒れており、病院 に搬送されたが、死亡した。
・環境省熱中症予防情報サイトによるWBGT値


参考資料:(リンク切れはご容赦下さい。)
厚生労働省>報道発表資料
平成30年「職場における熱中症による死傷災害の発生状況」(確報)を公表します。
別添1 「平成30年 職場における熱中症による死傷災害の発生状況(確定値)」[PDF形式:513KB]
平成29年「職場における熱中症による死傷災害の発生状況」(確報)を公表します。
別添1 「職場における熱中症による死傷災害の発生状況」(PDF:621KB)
平成28年「職場における熱中症による死傷災害の発生状況」(確報)を公表します。
別添1「職場における熱中症による死傷災害の発生状況」(PDF:458KB)
平成27年「職場における熱中症による死傷災害の発生状況」を公表します。
別添資料「職場における熱中症による死傷災害の発生状況」(PDF:500KB)
平成26年「職場における熱中症による死傷災害の発生状況」を公表します。
別添資料「職場における熱中症による死傷災害の発生状況」(PDF:617KB)
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