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熱中症による労働災害の発生状況

 警備業における熱中症の発生状況は、2022年に業種別の死傷者数でワースト2位となる深刻な状況です。熱中症対策用品の導入。派遣される警備先での職場環境を考慮した対策。契約側と熱中症対策のための休憩や水分補給に関する理解。巡察等における水分補給等の交代要員を手配するなどの対策実施が求められます。

<熱中症発生に関する取り巻く環境の変化>
 熱中症に対する取り巻く環境は、発生件数の増加。発生時の深刻な症状等により急速に認知が広がりました。また、労働災害として発生した際、十分な対策を講じずに発生した場合には行政による指導・監督が厳しい傾向にあります。
 また、2016年(平成28年)に厚生労働省は、前年の熱中症による死亡災害の発生状況を踏まえ、建設業と屋外で作業する警備業を熱中症予防対策の重点業種として取組が行われました。
 熱中症予防対策を講じずに労働災害として発生した場合、事業者は安全配慮義務違反に問われる場合もり、労働者保護の観点だけでなく企業防衛の観点からも対策実施が重要となっています。


<警備業における熱中症の状況>
 厚生労働省「令和4年 職場における熱中症による死傷災害の発生状況 」において、 2022年の警備業における熱中症発生人数は91人。産業別発生件数で建設業、製造業、運送業に次いでワースト4位(2021年はワースト3位)。熱中症により6名が死亡しました。
 また、発生件数でみると前年68人から91人。死亡者数は前年1人から6人の方が亡くなり深刻な状況となっています。
 熱中症に繋がる背景としては、多くの警備業において警備員は警備先へと派遣される業務体系であるため、就業環境の状態管理については現場警備員への依存が大きくなります。このため、現場警備員の就業環境が悪化していても、依頼者側へ申し入れ。交代要員の要請など行い難く就業環境にあると言えます。
 これを改善するためには、警備業者側が積極的に就業環境の把握や状態管理に努めなければ、適切な対策等を行うことは困難です。
 夫々の警備員が派遣される警備先(業務場所)が異なる状況において、それら全ての就業環境の把握と適時休憩等のため交代要員を手配することは、警備業者側にとって多量の労力とコスト必要となるため、未だ多くの警備業者で対策が後手に回っていると思われます。

 一方で2013年(平成25年)6月に兵庫県尼崎市額田町において警備員が熱中症にて死亡した労災事故では、男性警備員3人をガス工事現場で高温多湿な状況での業務に対し、熱中症対策として塩分や飲料水などをとらせる対策を怠たり、男性警備員1人が同日熱中症により死亡させたとして、尼崎労働基準監督署は、熱中症対策を怠ったとして労働安全衛生法違反の疑いで警備会社と同社会長を書類送検するに至りました。

 このように熱中症対策は企業(使用者)の安全衛生に関する重要な責務であると捉えられ、警備業界全体が共通の認識を持ち、各警備業者が対策を実行することが急務となっています。


<熱中症による死傷者数の業種別状況>
 年 建設 製造 運送 警備 清掃
と畜
その
2022
死傷者数
179 145 129 91 82 58 21 6 116 827
 内、死亡者数 14 2 1 6 2 2 2 0 1 30
2021
死傷者数
130 87 61 68 63 31 14 7 100 561
 内、死亡者数 11 2 1 1 3 0 2 0 0 20
2020
死傷者数
215 199 137 82 78 61 14 7 166 959
 内、死亡者数 7 6 0 1 2 4 1 0 1 22
2019
死傷者数
153 184 110 73 87 61 19 7 135 829
 内、死亡者数 10 4 2 4 1 0 0 0 4 25
2018
死傷者数
239 221 168 110 118 81 32 5 204 1,178
 内、死亡者数 10 5 4 3 2 0 1 0 3 28
2017
死傷者数
141 114 85 37 41 32 19 7 68 544
 内、死亡者数 8 0 0 2 0 1 2 0 1 14
2016
死傷者数
113 97 67 29 39 37 11 13 56 462
 内、死亡者数 7 0 0 0 1 1 1 1 1 12
2015
死傷者数
113 85 62 40 50 23 13 8 70 464
 内、死亡者数 11 4 1 7 0 2 1 0 3 29
2014
死傷者数
144 84 56 20 28 16 13 7 55 423
 内、死亡者数 6 1 2 0 0 0 1 0 2 12
2013 151 96 68 53 31 28 8 8 87 530
 内、死亡者数 9 7 1 2 3 2 1 1 4 30
2012 143 87 43 27 35 28 7 6 64 440
 内、死亡者数 11 4 0 2 0 1 0 2 1 21
2011 139 70 56 17 25 27 10 6 72 422
 内、死亡者数 7 0 0 3 2 1 2 2 1 18
2010 183 164 85 44 32 44 17 4 83 656
  内、死亡者数 17   2 47 
参考資料:厚生労働省、各年の公表資料「職場における熱中症による死傷災害の発生状況」


<警備業の熱中症労災害時事例:職場のあんぜんサイト分>
 「厚生労働省 職場のあんぜんサイト」にて公表された熱中症による労働災害事故。詳細な発生状況、原因、対策等が纏められています。
 なお、各事例は別ページ:「警備員の死亡労災事故(重大事故)事例」内の事例と同一です。

・熱中症による事例1

・区分
 施設警備(施設内車両誘導業務)
・概要
 スーパーの屋外駐車場において、熱中症となり、適切な応急処置がなされなかったことにより死亡した。
詳細外部リンク:
炎天下の屋上駐車場で車両の誘導・整理の作業中、熱射病に罹る
http://anzeninfo.mhlw.go
.jp/anzen_pg/SAI_DET.as
px?joho_no=100738


・熱中症による事例2
・区分
 交通誘導警備
・概要
 高温環境下で道路補修工事に従事していた警備員は、制服・保護帽を着用。適時水分補給を行っていたが、休憩中に意識不明の状態で発見され、死亡した。
詳細外部リンク:
交通警備員である被災者は、意識不明の状態で仰向けに倒れているところを発見された
https://anzeninfo.mhlw.go.
jp/anzen_pg/SAI_DET.as
px?joho_no=101354



<警備業の熱中症労働災害事例:職場における熱中症による死傷災害の発生状況>
参考資料:
厚生労働省、各年の公表資料「職場における熱中症による死傷災害の発生状況」より抜粋

・2022年8月
 被災者(60歳代)は8時30分からマンション新築工事 現場で車両の誘導業務を行っていた。16時30分頃急に現場を離れる姿を確認された。被災者が戻ってこなかったため 17時頃に被災者に連絡したところ、付近で倒れていたため、緊急搬送されており、搬送先の病院で死亡し た。
 気温33.7℃、暑さ指数WBGT30.0℃

・2022年8月
 被災者(40歳代)は9時からガス管敷設工事現場で交通誘導作業を行っていたが、15時頃に体調不良を訴え休んでいたところ、数分後に倒れ込み、緊急搬送されたが、搬送先の病院で死亡した。
 気温36.4℃、暑さ指数WBGT32.0℃

・2022年7月
 被災者(60歳代)は9時頃から学校の外壁その他長寿命化工事で工事車両の誘導警備を行っていた。11時30分から休憩し、13時頃代理人が被災者の様子を確認しようとした際に自家用 車の脇に横たわっている姿で発見され、緊急搬送されたが、搬送先の病院で死亡した。
 気温25.6℃、暑さ指数WBGT26.0℃

・2022年7月
 被災者(30歳代)は9時からケーブル配線切替工事で交通誘導業務を行っていた。14時頃休憩の際に小型自動二輪車に乗って現場を離れたところ、転倒して意識不明となり、緊急搬送されたが、熱中症による多臓器不全により搬送先の病院で死亡した。
 気温30.4℃、暑さ指数WBGT29.3℃

・2022年6月
 被災者(60歳代)は9時頃木造家屋建築工事現場に到着し、現場で待機した後、11時頃から車両の交通整理作業を行っていた。12時頃交通整理作業中に被災者が座り込んで立てなくなったため、救急搬送されたが、搬送先の病院で死亡した。
 気温35.5℃、暑さ指数WBGT32.7℃

・2022年6月
 被災者(60歳代)は8時から団地の巡回警備業務を行っていた。22時頃に5回目の警備巡回中に意識を失い、緊急搬送されたが、搬送先の病院で死亡した。
 気温28.0℃、暑さ指数WBGT24.6℃

・2021年8月
 工事現場の警備員(40歳代)として道路上で交通誘導業務を行っていたところ、路肩の法面の下にある側溝に転落し倒れているところを発見され、直ちに救急搬送されたが熱中症により死亡した。  なお、被災者は当該作業に従事し始めて2日目であった。

・2020年8月
 下水道工事において、交通誘導警備に従事し、同僚に体調不良である旨連絡し、車両にて休憩したが、その後返事がなく救急搬送したが同日中に死亡した。

・2019年7月
 掘削土砂運搬経路において、堤防上を警備 していたが、うつ伏せで倒れているところを通行人に発見された。救急車で病院へ搬送されたが、死亡した。
・環境省熱中症予防情報サイトによるWBGT値は 30.0℃。

・2019年8月
 午前中から交通規制に伴う交通誘導業務を 行っていたところ、昼過ぎに通行人に路上で倒れているところを発見され、病院に救急搬送されたが、3日後に死亡した。
環境省熱中症予防情報サイトによるWBGT値は 32.1℃。

・2019年8月
 工事現場で交通誘導員として工事用車両の 搬出入の誘導を行っていた。午後2時頃被災者の体調の異変を感じた同僚が休憩を指示し、休憩所に向かったが、25 分後、別の同僚が休憩所へ向かう途中にある公衆トイレの前で倒れている被災者を発見した。その後、救急車で病院に搬送されたが、死亡した。
・環境省熱中症予防情報サイトによるWBGT値は 30.0℃。

・2019年9月
 高速道路上で通信ケーブル張替敷設工事に係る交通規制作業及び警備業務に従事した。 警備終了後の交通規制撤去中、それまで資材車に同乗していた被災者が助手席から降りて こなかったため同僚が様子を確認したとこ ろ、助手席で意識を失った状態であった。応 急処置の実施後、救急搬送されたものの、5日後に死亡した。
環境省熱中症予防情報サイトによるWBGT値は 29.8℃。

・2018年7月
 午前9時より鉄道の線路上における電気設備工事の現場で列車見張り警備の業務に従事していた。昼の休憩中、作業員集合場所の道路上で寝ている被災者を不審に思った同僚が声をかけたところ、体調不良を訴えた。応急手当を行ったが回復せず、救急搬送されたが、その後死亡した。
・環境省熱中症予防情報サイトによるWBGT値は 32.7℃。

・2018年7月
 試験会場周辺の道路において、違法駐車防止及び道案内のため警備業務に従事していたが、倒れているところを通行人に発見された。病院へ搬送されたが、午後4時頃に死亡と診断された。
・環境省熱中症予防情報サイトによるWBGT値は 29.9℃。

・2018年7月
 橋梁建設工事において警備業務に従事していたが、作業現場内で倒れているところを発見された。救急搬送されたが、4日後に死亡した。
・環境省熱中症予防情報サイトによるWBGT値は 29.6℃。

・2017年7月
 被災者は災害発生当日、個人住宅の上水道引き込み工事現場で、道路誘導員として現場に入場していた。午前 10 時頃から体調が悪化し、呼びかけにも答えられないような状況となった。その後救急搬送されたが、4日後に死亡が確認された。
・環境省熱中症予防情報サイトによるWBGT値は 30.5℃。

・2017年7月
 被災者は、災害発生当日の午前9時から宅地造成工事現場の警備 業務に従事していた。午後3時頃現場作業が終了し、工事関係者が 現場の片付けを行っていたとき、被災者が体調不良となったため、 救急車で病院へ搬送した。しかし、翌日搬送先の病院で、熱中症による多臓器不全により死亡した。
・環境省熱中症予防情報サイトによるWBGT値は 27.3℃。

・2015年7月
 被災者は 9 時から住宅の新築工事現場で交通整理を行っていた。現場付近には日差しを遮る場所はなく、休憩時、被災者は縁石に座っていた。昼休憩中 の 12 時頃、被災者の体調が悪そうであったため、午後の作業はしばらく休む よう伝えた。16 時 30 分頃、被災者の様子を確認に行ったところ、倒れてい る被災者を発見したため、119 番通報し、被災者は病院に搬送されたが、21 日後に死亡した。
・環境省熱中症予防情報サイトによるWBGT値は 31.5℃
・現場付近には、休憩時に日差しを遮ることができる場所はなかった。
・水分や塩分の摂取は労働者任せであった。
・被災者に対して熱への順化期間は設けられていなかった。
・被災者は熱中症発症に影響を与えるおそれのある疾患を有していた。
・被災者に対して健康診断結果に基づく対応が不十分であった。

・2015年7月
 被災者はガス管入れ替え工事現場で、9 時から 17 時まで交通整理の業務を行い、同僚と車で会社に戻った後、17 時 20 分頃、自転車で帰宅した。18 時 30 分頃、居住アパートの敷地内で被災者が倒れているところを通行人に発見され、病院に搬送されたが、死亡した。
・環境省熱中症予防情報サイトによるWBGT値は 31℃
・水分や塩分の摂取は労働者任せであった。
・被災者は当日の業務の前に、前日の夜が寝苦しかったことを同僚に伝えて いた。

・2015年7月
 被災者は 8 時から街路樹伐採現場で交通整理を行っていた。15 時 30 分頃、被災者がふらふらしながら同僚に「もう無理です」と申し出たため、同僚は 一旦被災者を座らせ、現場責任者に連絡した。既に自力で動くことができなかったため、病院に搬送したが、翌日に死亡した。
・環境省熱中症予防情報サイトによるWBGT値は 31.6℃
・被災者に対して健康診断は行われていなかった。

・2015年8月
 被災者は 8 時頃から道路で除草作業現場の交通誘導作業を行っていた。17 時 に作業を終え、現場の作業員が運転する車で自身のバイクが駐輪されている 場所まで送迎される途上、被災者が運転手にもたれ掛かるように倒れ、意識が朦朧とした様子であった。同僚が 119 番通報し、病院に搬送されたが、死亡した。
・環境省熱中症予防情報サイトによるWBGT値は 29.8℃
・被災者に対して健康診断は行われていなかった。

・2015年8月
 被災者は 8 時 30 分から工場屋根改修現場で車両の誘導を行っていた。業務終 了後の 16 時 50 分に、被災者は「明日、明後日休みたい」と言い、車で帰宅したが、17 時 15 分頃、近くの路上で倒れているところを通行人が発見し、119 番通報により病院に搬送されたが、死亡した。
・環境省熱中症予防情報サイトによるWBGT値は 31.6℃
・水分や塩分の摂取は労働者任せになっていた。
・現場に元請事業者が設置した、冷房、製氷機、塩飴等が備えられた休憩場所を、被災者は遠慮して休憩時に利用していなかった。
・被災者は熱中症発症に影響を与えるおそれのある疾患を有していた。
・被災者に対して健康診断は行なわれていなかった。
・被災者に対して熱中症に関する教育は行われていなかった。

・2015年8月
 被災者は除草作業現場で、側道での交通整理を行っていた。10 時 45 分頃、同僚が被災者の異変に気づき、休憩をとるよう声をかけた。被災者が移動し ようとしたがその場で倒れ、病院に搬送されたが、翌日死亡した。
・現場における災害発生時のWBGT値(実測値)は 31℃であった。

・2015年8月
 被災者は道路災害復旧の工事現場で、交通整理を行っていた。13 時 40 分頃、他の作業員が放心状態になっている被災者に気づき、休憩させた。約 10 分後、その作業員が被災者の様子を見に行ったところ、被災者が倒れており、病院 に搬送されたが、死亡した。
・環境省熱中症予防情報サイトによるWBGT値


参考資料:(リンク切れはご容赦下さい。)
厚生労働省>報道発表資料
令和4年「職場における熱中症による死傷災害の発生状況」(確報値)を公表します。
別添1 「令和4年 職場における熱中症による死傷災害の発生状況(確定値)」[PDF形式:422KB]
令和3年「職場における熱中症による死傷災害の発生状況」(確報値)を公表します。
別添1 「令和3年 職場における熱中症による死傷災害の発生状況(確定値)」[PDF形式:499KB]
令和2年「職場における熱中症による死傷災害の発生状況」(確報値)を公表します。
別添1 「令和2年 職場における熱中症による死傷災害の発生状況(確定値)」[PDF形式:611KB]
2019年「職場における熱中症による死傷災害の発生状況」(確報)を公表します。
別添1 「2019年 職場における熱中症による死傷災害の発生状況(確定値)」[PDF形式:582KB]
平成30年「職場における熱中症による死傷災害の発生状況」(確報)を公表します。
別添1 「平成30年 職場における熱中症による死傷災害の発生状況(確定値)」[PDF形式:513KB]
平成29年「職場における熱中症による死傷災害の発生状況」(確報)を公表します。
別添1 「職場における熱中症による死傷災害の発生状況」(PDF:621KB)
平成28年「職場における熱中症による死傷災害の発生状況」(確報)を公表します。
別添1「職場における熱中症による死傷災害の発生状況」(PDF:458KB)
平成27年「職場における熱中症による死傷災害の発生状況」を公表します。
別添資料「職場における熱中症による死傷災害の発生状況」(PDF:500KB)
平成26年「職場における熱中症による死傷災害の発生状況」を公表します。
別添資料「職場における熱中症による死傷災害の発生状況」(PDF:617KB)
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